「いえ、私は全然。昔、母の手伝いをしたことはあったんですけど……。」
「そっか……よかったらいつでも食べにおいでよ。近くで、喫茶店やってるし。」
「え?この近くに喫茶店なんてありましたっけ?」
この付近には、喫茶店なんてなかったはずだ。
この辺りに住み始めてから、だいぶたつけど、一度も見たことがない。
「やっぱり、知らないよなぁ。商店街の路地裏の奥の方にひっそりあるんだけど。」
少し落ち込んでいる。でも、その中には「しかたないなぁ」っていう、あきらめも入っていた。
「多分、迷路通りのとこにあるんだと思います。」
斉藤君が話の中に入ってくる。
「迷路通り?」
そんな通りの名前は聞いたことがなくて、聞き返す。