外は静まりかえり、虫の羽音と風の音しか聞こえなかった。この夜、小春はなかなか寝付けずにいた。

…今、何時だろう。

そんなことを考えながら天井を眺めていた。

ギイ…ギイ…

誰かが歩いてくる音がした。お祖母ちゃんだろうかと小春は思った。母屋から離れの部屋へは短いが渡り廊下がある。そして小春の眠る離れの部屋を出たすぐ横にトイレがあるからだ。

…あれ?

障子に人影がうつった。祖母ではない。祖母にしては背が低すぎる。子どもだ。こんな夜中に子どもがいるのはおかしい。そしてこの家には小春しか子どもはいないはずだった。

「お、お母さん!起きて!お母さん!」

駄目だ。右側で寝ている父も起こそうとしたが駄目だった。

障子が、スッと音もなく開いた。