「何…飲む?っても コーヒーか紅茶か…

牛乳ぐらいしかないなぁ」

「コーヒー入れてあげる…よくママに

入れてあげてたの…チイはそのコーヒーに

ミルクを入れてカフェオーレ…」

「家のはインスタントじゃないぞ…

豆から挽くから…」

「分かるよ チイのところも豆から挽いてたよ…何処?
めちゃくちゃ美味しいのん入れてあげる」

俺は千秋に豆とミルなどのある所を

教えて ソファに座り待っていた。

しばらくすると、ゴリゴリと豆を挽く音と



香りが漂っていた。

(不思議な感覚だな…部屋で誰かに

コーヒーを入れてもらうなんて)

結構な時間が経っていたからか

俺はそのままウトウト居眠りをしてしまっていた。

「お待たせ…渉、出来たよ」

「んっ?あっ、俺…居眠りしてた?

おっ、出来たかぁ…どれどれ?

っつか毒 入ってないだろうな?」

「酷~い 入ってないよ! それより冷めないうちに飲んでみて…」

コーヒーをひと口飲むと

いつものコーヒーなのに

何故か全く違うコーヒーを飲んでるような味になっていた。

「どぉ?」

「驚き!めちゃくちゃ旨い」

「でしょ…ママも、いつもチイの入れたコーヒーは美味しい 美味しいって
飲んでくれて……」

突然、千秋が言葉に詰まり

涙ぐんだ。

(えっ?泣くわけ?どうしたら良い?
でも…辛いよな…寂しいよな…)

「泣きたい時は泣いていいから…」

「違うもん…目にゴミが入っただけ…」

「素直じゃないな…これからは

俺にこの美味しいコーヒー入れて…」

(あれっ?俺 何 言ってんだろ…

一緒にに住むの認めてる?)

すると千秋が大声で泣き出した。

「おい、チイ…泣いても良いって、

その…泣き方…」

「だって、渉…さっき泣いても良いって…言うか 今 チイって呼んだ…

アハハハ…」

呼んでないよ、っか泣き笑いか?」

動揺しながらも 千秋に寂しい思いを

させたくないと思う自分が存在していた。