私の瞳はこの異国の地では酷く目立った。

ヨーロッパ旅行。一人旅。

いつも人の影に隠れるようにして生きてきた私にとっては大決心だった。

キョロキョロと辺りを見渡してもほとんど日本人の観光客はいない。

それは少し心細い。

そして、どこか清々しかった。

街中で立ち止まる私を不思議そうに見る外国人、いや今は私が外国人なのか。

今日はどこへ行くべきか。

ガイドブックとにらめっこする私に誰かがぶつかった。

「すみませんっ」

聞こえたのは久し振りに聞く日本語だった。

振り向くと私と同じ黒い瞳と目が合った。

その人の側にも人はいない。

「もし、よろしければ一緒に回りませんか?」

初めて、自分から人を誘った。

彼は黒い瞳を真ん丸にして驚いてから微笑んだ。

「もちろん」