**
───~♪~♪
「…、」
イヤホンから流れる音楽を聞き流して、私は机の上で頬杖を付く。
遙鈴(ハルカスズ)、16歳
晴れて今日から高校二年生になる。
真ん中の一番後ろの座席は、去年とあんまり変わらない。
出席番号も去年と同じ“27番”。
1人で音楽を聴いてるのは私だけ。
それは決して友達が居ないからとかじゃない。
私達高2の学年はクラスが4つあって、去年と一緒のクラスの子達は数人程度。
だから喋り掛けようにも、去年のクラスで固まったグループがお喋りしてて、完全にアウェーになるのは目に見えてる。
だから私は、歌詞ももうとっくに覚えた音楽をボンヤリ聞き流していた。
その時、
「‥すーずーちゃんっ!」
「っ、うわ?!」
突然の大音量にキーンっ、と耳がガンガンして、私はふるふると首を振る。
突然イヤホンを引き抜かれて、大声で名前を呼ばれたのだ。
「また音楽聴いてるの?」
「‥藍ちゃん、…。」
「さっき入り口で声掛けても反応無かったから、ちょっと至近距離で叫んじゃった。‥ごめんね。」
なんて言って、フワッと女の子らしい笑みを零すのは、私の中学からの親友の近藤藍(コンドウアイ)。
ふわふわの巻き髪にくりくりの目でとっても可愛い。
けど中身は結構サバサバしていて、私としては一番付き合いやすい相手。
私はもう片方のイヤホンを外して、そんな親友に同じ様な笑顔で笑い返した。
「同じクラスだね?、今年も。」
「そうだね、私今年も鈴ちゃんと同じクラスで嬉しい。」
「私も藍ちゃんと同じで嬉しいよ。」
なんて2人で笑いあう。
ふと、藍ちゃんが隣の机を軽く叩いた。
「ねえ、そういえば鈴ちゃんの隣の席の人、誰か知ってる?」
「へ、…誰?」
「もー、相変わらず疎いんだから。」
そう呟かれて、思わず“ごめんなさい”って謝れば、藍ちゃんは“なんで謝るのよ”って小さく笑った。