里美のメールを待ちながら、どうしたもんかと悩みに悩んでいると




電話が鳴った。


相手は里美。


私は、勢い奥立ち上がると廊下に逃げ込む。




「もしもし!!!!」


声に出して説明すればきっと里美もわかってくれる。


『どうしたのー?よくわからないから電話した』



「だからー、すごく最低な奴で怖くて、高校生だよ?なのに上から物言ってくるんだよー脅してくるんだよ!!」


この状況を
あの仮面男の本性をどうにか知ってほしい



『とにかく最低な奴はわかった。なら普通に無視すればいいじゃん。』



あ、


無視か。



「あーなるほど。でも、できない場合は!?」


『はぁ?そんなの考えればわかるっしょ』



だるそうな里美に
私の鈍感さがいけないのかと痛感する。



『その従兄弟が山崎龍斗くんと被ってんじゃないの?憧れなんでしょ?付き合いたいんでしょ?だから、似ている従兄弟をどうしても重ねちゃうんだって!!!』


電話越しからの勢いに耳を壊されそうな勢いになりながらも必死に理解をする。




「......従兄弟に憧れを重ねてる?」



私が恐る恐る聞く言葉に
少し食い気味に里美はため息をつくと




『だから!!憧れだから、好きだから、山崎龍斗くん似のそいつに、どう接すればいいか戸惑ってるんだよ、だから敬語になるの!』



「憧れ......でも、棘があるの、敬語にしたら棘が...」



はぁあああ!?んなの知らないよっ

と、相当切れ気味の里美に私はタジタジになるばかりで



『あのね、敬語でも言い返すってことは、無視とかそんな方法あるんだから、やっぱあんたは、従兄弟を気になってるんだよ。』



気になってる?????



「ぇ、ちょ.....待って。ちょ、私の思考回路停止してます。」



うぅんと頭を悩ませる。



恐らくこれは、私の人生の中で難解だ。



山崎龍斗くんと
仮面男は同じなわけで。


だけど、性格は全く違う。



バラエティ番組でみる
爽やかな雰囲気とか、気遣いができて面白くて優しくて、いつもキラキラな笑顔をみせる彼と、


私を壁に追いやって変なこと(手繋いできたりとか乱暴に口を塞いだりとか)とか偉そうな口とか、怖い目つきの仮面男は違うもん。



絶対重ねてない。



憧れじゃない。

確かにあの綺麗な寝顔にドキドキした。

肘ドンされた時、嬉しかった。





でも、違うでしょ?



『いねこは、どうなの?無視するの?どうせ今日きりでしょ?会うの』




いつもは
いねこちゃんという彼女も
とうとう情緒不安定な私に切れたようだ。



確かに、今日を過ごしたらとうぶんは会わないだろうし、もう、彼のことなんて考えなくていいのかもしれない。



「で...でも、無視はできない。そんな...」



『最低な人なんでしょーもーよくわかんないけど、きっと敬語になるのは憧れてて、かっこよくて、怯えてるんじゃないの?』



「怯えてる?」



『嫌われたくないってこと!従兄弟のこと好きなんじゃないの?』






里美の言葉に、私は言葉を詰まらせた。





「好き?私が?彼を...?」



『さいていーーって言っときながら
やっぱり気になって気になって好きって、そんなことよくある事だって。』



分かった?
と、半分呆れた感じで聞いた彼女に
私は、

うん。

小さく呟いた。



『まぁうまくやれよ』


「...うん。」




そう言うと同時に切れる電話。




なんか疲れた。

頭つかいすぎたのかもしれない。






好きなんて、あんなやつ...好きなんて?







仮面男が好き?


山崎龍斗くんは好き。




あ......同じ?






「もーーーーーわけわかんないよー」