私の体は龍斗くんから離れ、彼は戸の向こうに姿を消した。
「いねこさん。こちらにすわって。」
社長さんにそう言われ、私は先ほど座っていたソファに再度腰をかける。
「....あ、のすいません。私...よく分からなくて」
おぼつかない言葉で彼女にことを発する。
この状況も目の前にいるこの人のことも全く知らない。
急ぐように続けられたこの龍斗くんと彼女の契約に私はただ、ききながしつづけていたのだ。
「申し遅れました。スターミント社社長の花森です。」
「山崎いねこです。」
花森さんという彼女から名刺を受け取る。
スターミント社。
「.....やっぱり.....ここは芸能事務所?」
「えぇ。山崎龍斗が所属している私が言うのもなんだけど王手芸能事務所よ。」
少し、困ったように眉をさげながら彼女はわらった。
「...私、無理やりここに...連れてこられて、あの、すいません。彼とは何もないんです。ただの従兄弟で.....私は何も」
そう、
私は何も望んでない。
彼との関係も
いとこのまま。
本当はそうだったら、きっとかなり楽。
「......知ってるわ。彼の...山崎くんの自分勝手な行動くらい。」
ハァーっと深いため息をついた花森さんに、私は何も言えなくなる。
彼とはただのいとこ。
そうではない、
外見上はさっき、ついさっき
『契約上のカップル』になった。
彼は私を利用して、
いい風に遊ぶだけ。
「...いねこさん。あなたはとても可愛らしい。とても美人だわ。それでもコレクションズにいきなりなんてそんなことできないの」
わかるでしょ?そういわれ
私は小さく頷いた。