温かいぬくもりを感じて目が覚めたのは、ゴトゴトと動くどこかで、




「.....あ、おきた?」



「っ!?」




幻だ。

目の前に山崎龍斗くんがいるっ!?


なんでなんで?
どういうこと?



.....と、かなり焦る私の脳裏で浮かんだのは彼と従兄弟の関係である事実。




ぁ。
そうか、私.....





「......ま、まって。」



寝転ぶ私の隣で少し微笑む彼の袖をつかんだ。




「ん?」



「どういうことか.....説明してください。」




自分の真上には太陽がサンサンと入る窓。
そして、景色は変わり、動き、ビルが次々と顔を見せる。




「.....ごめん。強引なことして。」




しゅんとなる彼に私はまだ理解ができない。



「....こ、ここ車?...ですか。」



ぼつりぼつりとつぶやきながら重たい身体を起こす。



「....うん。」



「.....待って...どうして私、あなたと入るんですか?なんで、車になんか...」



まるでこの状況の意味が分からなくて
ただ、彼の顔と自分の体を交互に見る。





「...いいから、俺について。」



「は?い?求めている答えになってないんですけど...」




彼の先に見える車の窓には、たくさんのビルが立ち並んでいて、自分の家から見える大きなセンタービルがすぐ近くにいることから




「......どうして、こんな....都会に」




.....いるとわかった。
ここは、交通が行き交う大阪の都会。





「....いいから黙って俺の話聞け。」



おーいと私の目の前で手を振る彼に私の脳はパンクしかけで




「.....いやです。返してください。今すぐ私の家に返してください。」



「無理。」



「......これ、誘拐です。」




「......誘拐じゃないよ。俺、君と知り合いだもん。」



だから、いいから静かにして待て、と
小さく微笑む彼にもう、怒りが頂点に達し始める



「....知り合いでも誘拐です」



「違う」



「....誘拐です。龍斗くんは悪い人ですね。」




俳優なのに。

あんなに人から慕われて、人気でかっこよくて、
私の憧れなのに。




「....ん。じゃあ悪い人でいいや。いいから降りて。」


そういった彼は、自分の手のひらを私に向け、はい。と言った。


気づくと、車は止まっていて、まどからさしこむひかりはもうない。


どうやら、ここは地下の駐車場らしい。