龍斗said
「俺、ヒトメボレってあると思う。」
俺は昔友達にそういった。
今もその言葉は現在進行形だ。
「明日の撮影、急遽無しになっちゃったんだけど、別の仕事入れる?」
マネージャーの電話で起きたあの日、俺は耳を疑った。
「いや.....明日はフリーでお願いします。」
嬉しかった。
ひいおじいちゃんの七回忌に参加できる。
今まで、モデル業から俳優までの撮影に休むことなく参加してきた。
お葬式も法事もできることができなく、いつもいつも後悔をしてきた。
だけど、明日こそは、みんなに会える。
それは、あの子に会えるということ。
「....私帰ります。」
だけど俺は、みすみす彼女を傷つけた。
小走りで廊下を走り去る姿に俺は思わず涙を流した。
こんな切ないシーンもいくつもしてきた。
こうやって泣くことだってたくさんあった。
なのに、これは脚本上じゃないんだ。
彼女は俺を嫌っていることに変わりはない。
どうしたいいのかわからず、そのまま寒い廊下に座り込んだ。
彼女が好きだ。