「.....冗談やめてください。」
あ、そうか、さっきの切ない声も
全部
演技だったのか。
私をからかうための迫真のもので、私はまんまと騙されてたのか。
「冗談じゃないよ?俺、いねこちゃんと一緒に住まわせろ。命令。」
彼の言葉は語尾が太く低くておもわず身震いをする。
なんて偉そうなんだ
この仮面男。
「......無理です。お父さんが許しません。」
朝ドラの件は本当だし、彼が住んでいるのは確か東京だってお母さんに龍斗くんに会う前に言われたから
この話は、嘘のかけらもなくて
ほんとうなんだとおもう。
だけど、私に溺愛なお父さんが
男と一緒に住まわすなんてきっと激怒に違いない。
私は、1人暮らしだ。
無論、龍斗くんと二人っきりってことになる。
......仮面男でも、顔はイケメンの彼と同居....。
「赤くなってるけど?いねこちゃん」
ぷくくと笑いをこらえきれていない彼にムカッする。
一瞬、ボワっと天に昇る気持ちになった私が情けない。
「....とりあえず、無理ですから。」
「いや、お父さん、いいよって言ってくれてたけど?」
「...ぇ」
さらりと、そういった彼は、小さく微笑んで
だから住まわせろとわたしを脅しにかかった。
「いや、いやいやいや!お父さん、さっきお母さんとの電話で拒んでたんじゃないんですか!?」
お父さん!?
まさかの裏切り!?(いや裏切りではない)
「......勘違いもほどにしてよー。あれは、お父さんが逆に俺と住みたいって話」
...は?
目が点になる私に対してまだ尚笑い続けている彼。
「.....ぇ、な、んで」
「んーだって俺、俳優だしぃー。俺とおじさん仲良いもん。釣り一緒に行くしね。」
自慢するかのように胸を張る彼に私は拳を握らざるおえない。
いや、お父さん、釣り行ってる仲間って娘の好きな俳優とか
まじ泣きそう。
どうしていってくれなかったのさ!!
「.....っていうか、お父さんが許しても私が無理です。」
言語両断。
無理。
「.....じゃあさ、俺、いねこちゃんと暮らす時は俳優の山崎龍斗になるって条件を出すってのは?」
なんたる名案なのか。
私のほおが上がる。
山崎龍斗くんと同居!!!
いい!すごくいい!
自分の情緒不安定ぶりに戸惑いを覚えるが、爽やかイケメンになってくれるのならこんな好条件はない。
まぁ、許してあげようかなと思いながら、彼の言葉に私はひっかかりを覚えていた。
.....
「.....ここでは、はいっんがっうううう!?」
俳優は禁止なのでは?と言おうとする私の口は再度塞がれた。
彼は禁句を述べても良いが私が言うのはダメなよう。
地獄の番人か君は。
「....まぁそういうことだから、明日からよろしく」
私の口を覆い隠していた彼の手が離れるとともに新鮮な空気が入り込む。
ツンと鼻を敏感にさせる香水の匂いに私は酔いしれそうになる。
抱きしめられた時も感じたこの匂いは.....
女物だ。
.....私は、彼女がいる人と一緒にすまなきゃいけないの?