「安い店知ってるんです」

 そう言い橘さんが案内してくれたのは、俺のマンションから徒歩10分程度の距離にあるスーパーだった。

「この辺りの事は、詳しいのですか?」

「私の実家この近くなんですよ」

「へぇ~」

「ご近所さんになりますね」

「う、うん」

 手をつないでのショッピング
 他人から見たら、俺達ってどんなふうに見えるのだろう?

 恋人?
 夫婦?
 それとも女友達?

「何か食べたい物あります??」

「特には……」

「遠慮しなくていいんですよ?
 お姉さん、何でも作っちゃいますから」

 遠慮している訳じゃないんだけど……
 俺は、何が食べたいのだろう…?

 うーん
 うーーん
 うーーーーん

「オムライス」

 オムライスって子供じゃないんだから……
 でも、ほろりと出た言葉は、オムライスだった。

「オムライス……
 わかった。
 お姉さんがんばっちゃう!」

 橘さんは、楽しそうに跳ねた。

 か、可愛い……

 橘さんは、手を繋ぎモードから腕組モードに切り替えた。
 橘さんの胸が俺の腕に当たる。
 柔らかい……

「顔が真っ赤ですよ?
 どうかしましたか?」

「ど、どうもしないです」

 この人、絶対わかっていてやってる。

「持内君、かわいいー」

 可愛いって……
 俺、男なのに……

「あ、これ可愛い」

 橘さんは、そう言うと猫の模様があるコップを見ながら言った。
 オムライスの材料を買いに来たのになぜ食器売り場に……
 やっぱ、女ってわかんないや……

 橘さんは、俺から離れると、今度は犬の模様が描いてあるコップを手に取った。

「持内君、これみて可愛いよ!」

「うん、そうだね。
 でも、さっきの猫の方が可愛いかな……」

「えー、もしかして持内君は、犬より猫派?」

「そうですね……
 犬より猫の方が好きです」

「私は、やっぱ犬かなー」

 橘さんは、そう言うとニコリと笑った。