会話が続かない。
 雨の音しか入ってこない。

 何を話したらいいのだろう?

 何を話せばいいのだろう?

 俺が困っていると、橘さんがクスリと笑った。

「変わってませんね…」

「え?」

「最後に会った時と変わってない」

「人は、そんなすぐには変わりませんよ」

 橘さんは、寂しそうに言った。

「変わりますよ
 変わる時は一日…
 うんん、人は一瞬で変わってしまう」

「何かあったんですか?」

「私ね、婚約者が居たんです」

「……はい」

 婚約者か……
 なんか今の俺の心にはぐさりと突き刺さる。

「その人ね、私が白血病になった事を知った途端……
 婚約破棄しちゃったんだ……」

「酷いヤツだね……」

「それでね、白血病が治ればもう一度婚約出来ると思ったの」