「でも、上手い事出会えましたね・・・」

 そう、タイミングが良すぎる。

「本当は、恭子ちゃんから実家の方へ電話があったんです」

「え・・・?」

 笹山さんから?

「私の実家の近くに転勤してくるって・・・
 それで、居てもたっても居られなくなって・・・」

「もしかして、ずっと待ってくれてたのですか?」

「始発から、待っていました。」

「雨の中ずっと・・・?」

「はい」

 どうして、そこまで・・・?
 俺には、理解できない。
 貴方は、俺の脊椎バンクが欲しかっただけじゃなかったの?

 橘さんは、ゆっくりと出された紅茶を口に含んだ。

「だって、ずっと気になっていたから・・・」

 気になっていた?
 気になっていたってどういう事だろう・・・

 橘さんは、俺の視線に気づくとニッコリと微笑んでくれた。

「引越しの手伝いをしてもいいですか?」

「え?あ、はい・・・」

 この人はいったい何を考えているのだろう・・・
 この時の俺には、解らなかった。