荒い息を整えて初めて目の前をみた私に真っ先に飛び込んできたのは床に座り込んだ母とソファに座り頭を抱える父。そしてそれを黙ってみている兄。なにが起きたのかわからなかった。 「兄さん、なにがあったの?」 私は一番近くにいた兄に尋ねた。 そんな私に兄はこちらをみて整った顔を歪め眉を下げて言ったのだった。 「父さんの会社が倒産した」 兄の静かな声と外の激しく打ち付ける雨の音が耳に焼き付いていつまでも離れなかった。