「……昔ね、別の事務所に勤めてた時にある歌手のマネージャーをしてたのよ。20代の女の子だったんだけど、才能があってね。雪那には劣るんだけど、高くて良い声してたのよ。」



 懐かしそうに語る硝子の話に、五人は耳を傾ける。“昔”というのは果たしていつのことだろう、それ以前に彼女は何歳だろうという疑問も浮かんだが、彼らはそれぞれどうでも良いことだと思った。“今”の彼女と、五人は関わっているのだから。



「その子、本当に才能あったのよ。でもデビュー前に社内の新人お披露目会に出た後、どうやら新人イジメに遭ったみたいでね。随分と自信喪失して楽屋に戻ってきたの。
……これから軌道に乗る筈だったのに、その子は逃げるように事務所を辞めたわ。行方はもう分からない。彼女、自分の才能をある程度自覚するべきだったと思うのよね。」



 硝子の言葉に反論する者は一人も居ない。彼女は正論を言っているのだ。



「自信過剰と誇りを持つことは、私は違うと思う。誇りを持つなら相手の誇りも当然理解しなきゃダメよね?その誇りが過剰になると、沢山のことが見えなくなるのよ。」



 分かるわよね、と念押しされた五人。みんな一様に頷いていた。