「……その子、知ってるかも。俺、ダンス同好会のみんなと一緒に十代限定のダンスの全国大会に出たことあるんだ。その時あの子も出てたんだよ。
あの子……優勝、したんだ。その時は確か、まだ小6だったよ。」



 風巳は目を閉じて、静かに言う。少年達は黙り込んでしまった。自分達が出る番組にそんな手強い相手が居るということに驚いているのだ。



「……心配することはないわよ。」



 硝子がきっぱり言うと、全員の視線が彼女へ向く。諦めにも似たその目を正すように、硝子は口を開いた。



「あんた達はあんた達のステージを見せれば良いの。その織春って子のパフォーマンスは私もちゃんと見たことはないけど、他人と比べる必要はないわよ。あんた達には、あんた達の良さがあるじゃない!」



 五人は深く頷く。“他人と比べる必要はない”。その言葉が、五人の心に強く響いた。

 芸能界は弱肉強食。個性と輝く才能を持つ者だけが這い上がれるというイメージが強い。勿論、有名になるにはそれ相応の努力が必要だが、芸能界に入った彼らに“まずは自信を持つことが大切”なのだと、硝子は言いたかったのだろう。