アメリカに居る間、織春は親切な家族の元でホームステイし、昨年帰国した。六年かけてようやく自分のダンススタイルを確立した、ということだろう。

 織春の噂は、雪那達も芸能界に入ってから何度か耳にしていた。彼女は「13歳の歌姫」、有名な海外シンガーに引けを取らないということから「第二の●●誕生」とまで囁かれ、デビュー前から随分音楽業界を騒がせていたのだという。



「でも俺、その子のことよく知らないんだよなぁ。」



 ボソリと光夜が呟く。紘・頼星・雪那が、応えるように首を縦に振った。



「テレビで見かけたことあるし、確かに上手いと思うけど……」

「じっくり聴いたことってないよな。」



 紘と頼星のやり取りに、硝子が「勉強不足ね」と呟く。それを聞いた雪那は小さく溜め息をこぼした。



「良い?アーティストは常に色んな方向にアンテナを張ってないとダメよ!周りから刺激を受けたり、アドバイスされたりしながら成長していくんだから。」



 硝子に言われ、風巳を除く四人は「はーい……」と溜め息混じりに返す。返事をしない風巳に硝子が、「風巳!あんたも分かった?」と尋ねる。彼はおもむろに顔を上げた。