「……頼星が辛いのは、みんな分かってるよ。でも、お前なら分かるだろ?今、一番辛いのは誰だ?」



 ──光夜の言葉で、頼星は涙を乱暴に拭う。その目は、雪那の両親をまっすぐに捉えていた。

 謝罪の言葉を口にしかけた頼星を、雪那の父が優しく止める。“全部分かってるよ”と言いたげな、穏やかな笑みを浮かべて。



「……僕達も、沙雪の時はそうだったんだ。特に雪那は言っていたよ。『何でお姉ちゃんなの!?』って。今の君と、同じようにね。」



 頼星が、ハッとした顔付きになる。それを見た硝子が彼に近寄り、声をかける。



「雪那のご両親は、あんたに二年前の雪那みたいになって欲しくないのよ。分かるわね?」



 微かに頷く頼星。硝子に続き、仲間達も彼に話しかける。



「頼星……卒業式、行けるよな?俺達も一緒に行くから。」

「雪那の写真、持っていこうよ。二人の卒業式なんだからさ。」



 風巳が頼星の肩をポンッと叩き、紘が涙を拭きながら優しく言う。最後に、光夜が声をかける。



「頼星、卒業式終わったら……分かってるよな?」



 頼星は、そっと頷く。

 ──明日、“大好きな人に別れを告げる”、と。