「あ。二人共、追っかけの人達が苦手なんだっけ……」



 ピンときた顔をした後で気の毒そうに言った雪那に、頼星は「だって!人が移動する度にキャーキャー言いながらついてくるんだぞ!?な、風巳!!」と珍しく大声を出した。光夜と紘は物珍しそうな顔をして彼を見ている。

 雪那が「そこで不機嫌な顔するのが間違ってるよ。ただでさえ無愛想なんだから怖いと思われるよ?手を振るくらいはした方が良いと思うけどな」と助言すれば、頼星は難しそうな顔で小さく唸った。すると、風巳がボソリと呟く。



「俺も頼星もさ、分かってはいるんだよ。自分達がアーティストっていうよりも“アイドル”なんだって。
アイドルってさ、色んな人の憧れの対象になるんだろ?それって俺達がオーディション受けた目的とはちょっと違うよな?それは三人も同意してくれると思うんだ。」



 風巳の言葉に三人と頼星が頷く。アイドルはイメージが大事だと言われているから、メディアでは本人のキャラクターとは別のキャラクターを演じる人も居るのだ。

 自分達はただ、音楽が好きなだけ。求められていることと自分の意志との違いを、風巳と頼星は感じているのかもしれない。