いつしか辛い毎日に
明日(あす)を見ること できなくて
だけど 君に逢えたから
前見て歩いて行けたんだ





 前回出演時のアレンジされた『桜舞う時』とは違う、高く透き通った切ない声に耳を疑う。だが、歌っているのは確かにSetsunaだ。いつしかSetsunaの声に魅了され、観客は目が逸らせなくなっていた。





君はきっと知らないだろうね
目が合う度に高鳴る鼓動を
君に言いたい一言は
今でもずっと 心の奥さ





 Kazamiのハモリが加わると、息を呑む程の恍惚の震えが体を包む。音楽の根源は“これ”だと唱える人も居るが、確かに間違いではないだろう。惹き付けられた状態から我に返り、観客はKouya達三人に視線を向けた。

 目に入ったのは、キレのあるKouyaのステップ。楽しそうに踊るHiroの笑顔。鮮やかで印象に残るRaiseiのターン。中央に視線を戻せば、気持ちを込めて歌うSetsunaとKazami。絶妙な調和音が耳を貫く。

 五人は確実に、見る人々の心を掴んでいた。彼女達の大半が言わば“トランス状態”で、心が一点に集中してしまっている。つまらない世の中にも、夢中になれるものは存在するのだと教えられているようだった。