「いや……俺が悪かったんだよ。侑も雪那もごめんな?」

 耀人はすぐに頭を下げた。リーダーのクセに自分勝手な考えを持って、自分は馬鹿者だ。途切れ途切れにそう訴える。それを聞いた頼星が、滅多に開かないその口を開く。小声の筈であるその言葉は、存在感を纏う低さのお陰で耳に残った。



「……雪那も耀人も、謝る必要ないだろ。」

「え?」



 頼星の台詞が聞こえ、全員の声が重なる。雪那は、一際驚いた顔で頼星を見ている。とぼけた顔をしている彼女に笑いが込み上げたのか、フッと笑って頼星は続けた。



「ダメなことはダメってはっきり言えるのが、雪那の良い所だろ。耀人はバンドのことをいつも考えてるから、そういう発言したんじゃねぇの?
……俺はそう思うけど、みんなは違うのか?」



 一同、迷わず同意を示す。全員の首が縦に動いたのを確認し、頼星の口元が僅か上を向いた。

 彼は「そういうことだから、今のやり取りはなかったってことにしようぜ」と言い、不敵に微笑う。心を許した相手にしか見せない表情の一つだろう。初対面や関わりの少ない人からは“無愛想・言葉が乱暴・恐い”と評判の頼星だが、仲の良い友達からすれば、それはおかしな三重奏なのだから。