「いえ、困るなんて…
私に出来るかどうか。」

来羽はだいぶ謙虚な方だと思う。
人より勉強も出来るし気も遣えるのに、それに驕ったり自慢したりしない。
それが普通だと言ってしまえばそれまでだが…。

小学生の頃、来羽はもっと大人しかった。
謙虚という言葉とは程遠い、無口で暗い子。
家族と私の前だけ、しかも家の中限定でしか喋らないし笑わない子だった。
その時には知らなかったけど、人間関係で色々あったらしい。
私が隣の市の私立中学校を受けると知ったときは、泣きながら「私もゆうちゃんといっしょの学校に行く‼」と宣言したくらいで。
もっとも、高校を選ぶときには「侑貴は私と同じ高校に行くでしょう?」に変わっていたけど(笑)


「彼女たちのことを一番知ってる来羽さんが適任なんだ。
あと…、」

突然耳打ち。
来羽に何すんだ、とつい思ってしまったけど、ここには女子しかいないから構わないんだった。

「ふふ、それもそうですわ。
私、秘書をやらせていただきます。」

何を言われたんだろう。
あんなストンと腑に落ちるもんだろうか。