「あの･･･大丈夫ですか？」



竹下さんが、俺の隣にしゃがみ込んで、俺の顔を覗き込む。


「ありがとう。リカの事、本当にありがとう。」



複雑な顔を見せた彼女は、


「どうして、リカさんは１人で赤ちゃんを育てないといけないの？何で歩太さんは、リカさんと一緒に赤ちゃんを育ててあげないの？」



涙目になりながら、必死に俺に訴えてくる。



この子はきっと、俺達の事情を知らない。



リカはきっと、話していないんだ。



「ごめんな。俺が弱虫だったから･･･」



「リカさんの事、愛していますか？」



「愛してる。この世で一番、リカを愛してるよ･･･。」



言葉に出して言った瞬間に、自分の目から、涙がこぼれ落ちた。



「愛し合っているのに、どうして離れていなくちゃいけないんですか？

リカさん言っていました。

歩太さんの事愛してるって。

だから赤ちゃんを産むんだって。」




リカは･･･離れてからも、こんな俺を愛してくれていたの･･･？




悔しくて、情けなくて涙が止まらなかった。



「幸せにしてあげて下さい。」



どうしてリカはこんなに強いんだろう？


違う。



本当は怖くてたまらなかったはずだよな。




不安でたまらなかったはずだよな。



俺が守ってやれなかったから、リカは強くなろうって頑張ったんだ。



「リカの事、絶対に連れて帰るから。もう絶対に離さないから。」



竹下さんの目を見て、強くそう言った。



彼女は静かに頷いた。




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