「ゼネフ様……………」

ーこの世の必要悪として、災厄という名の〃ヴァンパイア〃がアルバンテールに落とされる。


ヴァンパイア………まさか、ヴラドのこと!!?


「ヴァンパイア………?」


ー災厄の名だ。血を求め、吸血したモノを僕とし、繁殖していく。


「何て、酷い…………。それを聞いて、なおさら私は、あの世界を見捨てられません」


強く何かを決意した強い瞳で、アリア様はゼネフ様を見据えた。



「あの世界に、災厄を落とすというのなら、私は最期まで、慈愛の女神として、あの世界の希望でありましょう」


ーアリア、お前は我の愛しい子。死なせたくないのだ…



「私にとってゼネフ様は、私の父のような存在です。でも、私も譲れないのです。どうか、息災で…」


アリア様はそう言って、悲しげに笑い、深々と頭を下げた。



ゼネフ様の元を去ったアリア様の後ろから、今度は私にも見覚えのある少女がかけよってきた。


「はぁっ、はぁっ、アリア様!!!」


紫色の瞳と髪をもつ少女、あのカルノンゲーテ教会で出会った少女だった。


「セシル………」


アリア様は立ち止まり、セシルを振り返った。