「俺、顔に出てるか?」
苦笑いをするレインに私は頷いた。でも、きっと他の人には分からない些細な変化だ。
「……ツング村は、俺の生まれ故郷なんだ」
「えっ………」
そんな!!レインの故郷が今、戦地となってるの!?
「じゃあ、レインのご家族は!?」
「それは、心配ない。ガキの頃、皆死んだからな」
「っ!!」
そんな………レインの家族は、もう………
私、レインの事何も知らなかった。私の事ばかりで、この人の孤独に気づいてあげられなかった。
「あの戦火に、敵兵の剣に、時の権力者に、何もできなかった俺たちは色んなモノを失った」
「レイン…………」
この争いの絶える事のない世界で、私の知らないどこかで、こうして大切な何かを失う人達がいる。
その不甲斐なさに、怒りさえ覚える。
「俺は、願ったよ。どんなモノを対価にしても、抗える力が欲しいってな」
「レインが騎士になったのって………」
「まぁ、そういう事だ」
そう言って笑うレインに、私は苦しくなった。
血筋というのは時に厄介で、騎士も、それ相応の地位が求められる。
その中でも、農村の出であり、地位も持たないレインが、騎士にまで上り詰めたのは、並大抵の努力じゃない。