「と、とりあえず!!そろそろ視察に……」



そうごまかすように立ち上がると、すぐに扉を慌ただしくノックする音に遮られた。



「王子!!失礼します、伝令にございます!!」

「分かった、入って」


その声音に、ただ事じゃないことは安易に予想できた。



「失礼します、王子。ダート領主がツング村に侵略を開始したと伝令が参りました!!」


「!!」


声を上げようとして必死に抑えた。私の同様は、兵や、民への不安へと繋がってしまう。



ダートはこのアルバンテールの5つの領地の一つ。その領主が、まさか他領地の村に手を出したの!?



「ツング村は、アフィカ領地の村じゃのう。よりにもよって、アフィカの領地に手を出しおったか……」



ヘルダルフおじちゃんが苦い顔をするのも分かる。アフィカ領地の領主、ガウェインは今年45となるが、自ら戦に参加するほど、血気盛んな性格なのだ。



そんなガウェインの村を襲ったとなれば………



「ツング村…………」


すると、レインが険しい顔で考え込んでいるのが見えた。



「レイン………どうかした?」



なんだか、顔色が悪いように見える。私の気のせい?



「あぁ…いや、悪い、ボーッとして。それにしても、ダートの領主、シルビエ様は何故、ツング村を?噂によれば、友好的で優しい方なんじゃないのか?」



レインはまるで誤魔化すように話を変えた。