「まあソレはソレとして」

と、ボクは無理やり話を本題(?)に引き戻した。


「『なおちゃん』とか、気色悪いんで、止めてくれます?」


――あれ?
ボクは変なこと言ったつもりはないのに、部屋の温度が急激に下がった気がした。

振り返った純平の顔からは、笑いが消えていた。


ソファに倒れ込むようにして顔を隠したままの先輩は、何も言わないどころか微動だにしないままだ。
あれ、聞こえなかったかな。


「あの」

もう一度口を開きかけたボクを、美紗が制した。


「何?美紗」

「言葉が足りないのよ、なお」


そう言った美紗は、なんでか、笑っているのに、すごく哀しい目をしていた。