「好き嫌いは駄目だよ、なおちゃん」

ククッと笑いを抑えながら、先輩はさっきよりは大分自然にボクを呼んだけど……。


『なおちゃん』

呼ばれなれないフレーズは、なんか、ムズ痒い。
『ちゃん』とか、女の子の呼び方だし。
ボクには似合わない。


「あの、せんぱ……じゃなくて、えーと……鷺沼先輩」


アスパラとカボチャの茶番(?)を挟んだ後だから、ボクはさっきほどの反発もなく、教えられた名前を呼ぶことができる。
これは会話の流れを汲んだボクなりの誠意で、妥協点だ。

すると先輩の笑いが一瞬で引っ込んで、目が丸くなった。
……『先輩』に『鷺沼』を付けただけなのに、そんなに衝撃だったのかな。


ええと、ボクは『なおちゃん』っていう、やたら違和感のある呼び方を変えて欲しくて呼びかけただけなのだけども。


あ、もしかして……。