「咲良台ってね、桜だけじゃなくて、1年中『良い花が咲いてる』んだって」

そう言いながら、突然先輩が振り返った。
ボクは先輩に向かって伸びかけていた手を隠し、ちょっと慌てた。

見渡せば確かに、ツツジや木蓮と言った桜以外の花も、そこらじゅうに咲いている。


「いいとこですね」

花を愛でるとか、香りにうっとりするとかは柄じゃない。
けど、素直に感じたことを口にした。

桜もそれ以外の花も、屋台もアスレチックも、みんな好きだ。


「気に入った? ――良かった」

「先輩」

「……ん?」

「ありがと、連れて来てくれて」


お礼を言っただけなのに赤くなった先輩は、前に向き直ってその顔を隠そうとする。

そんなトコも、……好き。