行きがけの途中のコンビニで昼食を買った。
本当は【デート】らしくお弁当でも作ってみるべきだったのかもしれないけど、そんな器用なことが出来るほど、ボクは【女の子】じゃない。


渋滞もほとんどなく車は穏やかに進み、山の上の駐車場へ向けてくねくねと曲がる峠道を登って行った。

「うわぁ……!」

狭い山道の両側から空を覆い尽くす満開の桜のトンネルに、ボクが思わず感嘆の声を漏らすと

「ね、綺麗でしょ」

少し得意げになった先輩が、満足そうに眼を細めた。

見慣れない眼鏡の横顔と桜のトンネル、どっちに見惚れようかなんて、少しだけ迷ってしまう。


しばらく会えない間に膨らんだ【好き】という気持ちが、ちょっとの刺激でも弾けそうな危うさで、内側から胸をキュッと圧迫していた。