話を始める前に、彼女はコーヒーを淹れてくれた。

心を静めて、頭の中を整理する時間が欲しかったのだと思う。
別に飲み物なんかいらなかったけれど、そう思ったからボクは黙ってそれを待った。


「生徒会長を……見たの」

「うん」

リビングのテーブルで向き合って、コーヒーを二口ほどすすってからゆっくりと話し出す。
美紗にしてはまとまりのないその語り出しが、時間を稼いでも治まらなかった動揺を表しているみたいだった。


「今月に入って、3回。車に乗ってて、最初は良く似た人だと思った」

眼鏡かけてたし、と付け足しながら、彼女はまた一口コーヒーをすする。


先輩、眼鏡なんかかけるんだ――、と、一瞬だけボクの意識は話から逸れた。