「大丈夫……落ち着いて」

近付こうとすると美紗はさらに壁際に身体を寄せて、息を吸う音がさらに乱れた。


「美紗。大丈夫。大丈夫だから」

構わずに距離を詰めて、その震える身体をしっかりと抱きしめた。

「ゆっくり息、吐いて」

呼吸のリズムを整えさせるように、ゆっくり背中を擦る。

大丈夫、と繰り返しながらそうしている内に、美紗の背中が、ボクの手の動きに合わせてゆっくり上下するようになった。


「――落ち着いた?」


おずおずと持ち上がった彼女の顔は、涙でぐしゃぐしゃになっていた。