今このタイミングで電話が来るのは、ただの偶然なのか、それとも――


「――やあ。久しぶり」

『……なお……ッ！』

やたらと穏やかな気持ちで電話を取ったボクとは対照的に、聞こえてきた美紗の声は切羽詰まっていた。


「おい、どうした？」

『なお、ごめん……！　私――』


――何か、あったんだ。

空いてしまった２週間やその直前の彼女の言動とは関係なく、たまたまボクが今日、彼女に会いにいくことを決心したのとも全く関係なく。
今このタイミングで、彼女がボクに電話をしてこなければならない何かが。


それが美紗を、こんなに焦らせている。