「……」

照れたのか、梶原は無言で目を逸らす。
否定の言葉を発さないのが、つまりは肯定を表していた。


でも。

「ごめん。あげない」

「……は?」

驚いたように顔を上げてポカンと口を開けた梶原は、きっと、ボクが「要らない」って言うのを期待していたのだと思う。


「それ、ボクがもらうから」

残念だけど、梶原には渡さないよ。


「お前、鷺沼さんのこと……」

「さー、部活行こっか!」


梶原の言葉を遮って、受け取ったネクタイを胸に抱きしめて。
出来うる限りの極上の笑顔で、ボクは前進を促した。