「岸本!」

放課後、部活に向かう途中で梶原に呼ばれる。

彼が差し出した右手には

「……何、コレ?」

「鷺沼さんが群がる女どもから必死で守ってたのを、オレっちが奪ってきてやったぜ」

――ネイビーの、ストライプ柄の

「これ、……響先輩のなの?」

ネクタイだった。


「奪ったの?」

その姿を想像して笑ったボクに、梶原は顔をしかめながら「嘘だよ」と言う。


「預かった。鷺沼さん、誰かに取られるくらいならお前にあげたいんだってさ。どうせ要らないだろうけどとかなんとか、ブツブツ情けないこと言ってたけどなー」