美紗がチラリと純平に視線を向けてから目を伏せた時、両サイドの長い髪が肩から落ちて、彼女の顔を隠した。


「ねえ、どっちが好き?」

「止せよ、なお!」

更に追い詰めようと質問を重ねるボクを、さすがに純平が止めに入った。
でもボクは、止まらない。


この流れに任せて、今、はっきりさせてしまえばいい。
ボクが一番知りたかったこと。
一番……恐れていることを。


「ねえ、付き合うの?」

――純平と。


美紗は、俯いたまま。
微かに震えてすらいるように見えた。

この距離でギリギリ聞き取れる程度の小さな声で、彼女は「ごめんなさい」と言った。


純平の舌打ちが聞こえる。
彼が何に対してイラついているのか、ボクには良く分からない。


美紗の『ごめん』は何に対する謝罪なんだろうと、ぼんやり考えていた。