恋をするというのがどういう気持ちを指すのか、ボクにはまだ良く分からない。

だけど、もし彼の初恋の相手がボクだと言うのなら――、それを【初恋】と呼ぶのなら、きっとボクの気持ちもそれに当たるものだったんだろう。


【初恋】の認識が一致しているのなら、その概念がどんなに曖昧なものであろうとも問題ではない。

だから、うん。
認めてしまっていいのだと思う。
この人が、ボクの初恋の相手なのだと。


「――なお。来ないかと思った」

大きな荷物をベンチに置いたまま、声をかける前にボクの存在に気付いた彼は立ち上がった。
ボクはその言葉に、少しだけ笑って返した。


「なんでだよ。行くって返事したろ、純平」