「好きなの?」

「はあ?」


とんちんかんな美紗の質問に、思わず出た声は自分でもうわっと思うほど不機嫌だった。

そうじゃねーし。
話すのも初めてだったのに、なんでだよ。

……て言おうとして抗議の視線を向けた先にいる、美紗は。

なんだか今にも泣いてしまいそうな顔をしていた。


そう言えば少しだけ彼女の目が腫れていることに、その時になってやっと気が付いた。

ああ……昨日。
そんなに、泣いてたのか――、……純平の、胸で。


……もう、泣かないで。
今度は純平じゃなく、ボクが――


「コラ」

無意識に美紗の顔に伸びかけていたボクの腕は、純平に掴まれた。
あ、と思った瞬間に、少しだけ頬を赤らめた美紗が、一歩後ろに下がった。


――まるでボクから逃げるようにして。


純平の背中に、隠れるようにして――。