「ところで」

ついでのように梶原が言ったのは、『本気では向き合わない』と突き放しておきながらも、彼なりにヒントをくれたのだと思う。


「その宝物は、ほんとは元々色褪せてたんじゃねえの? ヒビや傷にあえて気付かないフリをして、綺麗なトコばかり見てきたんじゃない?」


そう、多くを語らなくても察してくれる人だから、頼ってみてもいいかと思ったのだ。

だけど、ボクは間違ってた。
いざ話そうとすれば口は重く、一体何を話せばいいのか、話すべきなのか、話したいのか、分からなくなるばかり。

そして気付いた、間違っていたのだと。


「梶原、付きあわせてゴメン。……ありがと」

「オレ、結局何もしてねーんだけど」


いいんだ、気付けたから。
ボクが間違っただけなんだ。


「梶原のおかげで見えたよ。――ボクの、北極星が」