例えばそれは、美紗に対する独占欲なのかもしれない。
純平に対する嫉妬心なのかもしれない。
美紗がボクより純平を必要とし、ボクの知らないところで彼を頼っていたのが気に入らないだけ?


――もしかしたらボクはただ、自分があの2人にとって【不要】な存在になることを恐れているだけなのかも知れなかった。


あるいはそれ以外の何かなのか……ボクは自分の気持ちにすら鈍感らしく。
いくら考えても、美紗が泣いた理由どころか、自分がショックを受けた理由すら分からないままだった。


「冷めるよ」

母さんにそう言われて我に返った時には、すでに湯気が立たなくなっていたスープ。
せっかくレンジで温め直してあったから揚げも、再び冷めたせいか、さらにヘビーになっていた。


「遅れるよ」

さっきと同じトーンでのんびり言われたが、時計を見ると、とっくに家を出る時間だ(どうせ言うならもうちょい急かして欲しい)。
冷めた朝食を、慌ててかき込んだ。