響先輩との勉強会を通して、ボクは少しだけ理系科目が好きになった。
苦手を克服したのかと言えばはっきりそう言い切れるほどでもないが、嫌悪感がなくなった分、大分マシになってきたと思う。

赤点がうんぬん、という指標ではなく、分かるようになることが『楽しい』と思えるようになったのが一番の収穫だった。


……先輩は、金曜日を最後に、その後一度もボクに触れることはなかった。


「じゃあ、明日のテスト、頑張って」

「はい! ボク、はじめて少しだけ自信あります」

玄関まで見送る。
ボクの言葉に、先輩は嬉しそうに顔を崩した。


「テスト、終わったら連絡して。……休める時は早めに寝るんだよ」

コクリと頷く。

初日は文系の得意科目(あくまでボク基準だ)ばかりだ。
その分後半に苦手科目が並ぶから、ゆっくり休むことが許されるのは今日くらいだろう。