ロールケーキを、また一口食べた。
生クリームの甘みとフルーツの酸味が口内に広がっていく。
その余韻に浸りたかったから、お茶に伸びかけていた手を止めた。


ケーキの余韻を舌で転がしながら、先輩が言ったことを頭の中で反芻する。


「……てか、先輩にも聞かせられない相談って」

笑い飛ばそうとした言葉の語尾は、プツリと途切れて消えた。


今のボクが、誰かに頼るほど困ってない、とは言えない。
嘘は吐きたくないし、先輩は、分かってくれているから。


あなたに助けて欲しいんです、なんて、もっと言えない。
醜態をさらしたことへの羞恥と先輩の気持ちを利用したことに対する負い目は、ボクの口を重くした。