「アイツ、ああ見えても口は堅いから。秘密は絶対厳守」


沈黙を破って紡がれた言葉に顔を上げれば、先輩の表情は既に和らいでいた。
ボクは答えを言いよどんだことを誤魔化すように、急いでロールケーキを口に運んで飲み込む。


「ホントにー? めちゃくちゃ噂好きそうでしたけど」

お茶で流し込みそう言うと、先輩は可笑しそうに顔を崩しながら首を横に振った。

「好きなのは聞く方。それも、本人の口からね。アイツ自身は、絶対に他人の秘密を口外したりしないよ」


へえ、あの小さなサルが。
どうやら彼は、響先輩からの絶対の信用を得ているようだ。

――それは、何にも代えがたい、梶原大吾の人間性を物語る事実のような気がした。


……それが、そう思っていることこそが、ボクがいつの間にか響先輩に絶対の信用をおいていることの証明なのだとは、気付かずに。