「あいつ、こっちが黙っててもペラペラしゃべってくれるから、困ることなかったですねー。あ、ボク、こう見えて結構人見知りなんだけど」

そう言うと、先輩は「ははっ」と声に出して笑った。

ボクも緑茶をすすり、先輩が持ってきてくれたロールケーキを一口食べる。
ふわっと柔らかな生地が口の中で溶けて、クリームの程よい甘さが広がる。


「おいしいっ!」

「そ? 良かった」

一瞬浮かんだふわりとした笑いがすっと引っ込んで、先輩は不意に、少しだけ真剣な顔つきに変わる。


「あいつと、どんな話したの?」

「うーん……」

その問いかけに、梶原との会話の中で一番残った言葉が自然と口からこぼれる。

「北極星とか」

先輩は、笑いを堪えながらアイツらしいと呟いた。

それからまた、ぐっと瞳が真剣みを帯びる。

「なお」