その後数学から化学に移行した後も、先輩の教え方は要領を得ていてとても分かりやすかった。


びっくりしたのは、彼と美紗の教え方の違いだ。


美紗は不得意な部分を無理に教え込もうとしないで、いかに得意な箇所で点を取らせるかを計算していた。
出来の悪い生徒に短時間で教えないといけないのだから、そのやり方は効率的だったと思う。
あくまでボクの目標は赤点回避だったし、彼女もそれをよく分かっていた。


先輩は、弱い部分をひとつずつ見つけては丁寧に埋めてくれる。
今までハテナが浮かんだまま、ただの記号の羅列として暗記していた化学式の意味が分かった。
弱点だらけのボクみたいな生徒じゃ時間がかかりすぎて遠回りのような気がするやり方だけど、意味が分かると、不思議と覚えるのも速くなった。


「ボク、はじめて自信持って化学に挑めるかも!」

顔をあげてそう宣言すると、先輩は嬉しそうに目を細めた。