「飲み込み早いな。もう大丈夫だね」

「全問正解?」

「全問正解」

もう一度、ポンと頭を撫でられる。
自分がこんな風に褒められて単純に喜ぶなんて、知らなかった。


「次いこう! 次!」

勉強が楽しくなるなんて、知らなかった。


先輩の笑顔に、甘い言葉に、優しい目に、頭に乗っけられた手に、騙されているような気がしなくもないんだけど。
出来なかった原因が分かって、出来るようになって、出来たことを誉めてもらえるのは楽しくて。


……なんだか鼻先にニンジンぶら下げられた馬みたいだな、と思ったら、ボクの中に【ニンジン=先輩】って公式が一瞬見えてきて、釈然としない思いで首を捻った。


「……どこか、まだ分からないところある?」


――あるっちゃあるけど、数学じゃ、ないんですよね。
引きつった笑いを浮かべたまま両手を振って否定すると、先輩は不思議そうに首を傾げた。