途中式を書き連ねる手元にじっと視線が注がれていて、ちょっとだけ集中力を欠きながらも、上から順にスラスラと数式を解いて――


「そこ!」

2問目で先輩が急に声をあげて、びっくりして力んだせいでシャーペンの芯がポキッと折れた。

驚いて固まったボクを尻目に「やっぱり」と何か確信したように頷いた先輩は、ボクの根本的な間違いを言い当てた。

「約分の仕方がおかしいんだよ」


こんな短時間で、あっさりと。
高校受験の勉強を始めた頃からずっとボクに教えてきた美紗先生が見逃していた弱点を。


「……え、約分って! 算数じゃん!」

さすがにそれは出来る、と言い張りたかった。

けど、ボクの手からシャーペンを抜き取って途中式を大きく書き直し解説していく先輩の言葉に、納得するしかなかった。