先輩がノートにずらりと並べた数式は、すべて同じ公式だった。
でも、なんでだろう?

「先輩? ボク、この公式はちゃんと覚えてますけど」


問題文から適切な公式さえ導くことが出来れば、あとは計算するだけ。
美紗はそう言って、問題文と公式を結び付けてボクに叩きこんできた。

先輩が作った問題は全部、既に公式に数字が当てはまった状態で、美紗の言葉を借りるなら『あとは計算するだけ』の状態だ。


「解き方あってるのに、答えが間違ってるってこと、今までなかった?」

「……よくある」

答える声は自然と小さくなった。

けどそんなの、ただの計算ミスでしょう?
そう思ったが、「解いてみて」と促されるままにボクは計算を始める。