何かが、ざわついた。

うなじの辺りの髪が逆立つような錯覚に襲われ、さすがにそれはなかったけど、袖口をめくってみれば腕に鳥肌が立っているのに気づいてごしごしと擦る。


音が途切れた。
電話が終わった、わけではなかった。

携帯を耳に当てたまま、梶原がじっとボクを見ている。


「――任せてください。心得てますって。一応オレ、これでも【現役】っすよ」


響先輩と梶原が、どんなやり取りをしたのか知らない。

だけど梶原が電話口にいる先輩に向かって言ったはずのその言葉は、何故かボクに対して言っているように感じた。
――多分、彼のブレない視線のせいだろうけど。