とっくに電話の相手が誰か理解している梶原は、嬉しそうにそれを受け取ってニヤついた表情を隠さずに捲し立てた。


「鷺沼さーんっ! 安心してください! オレっちをチビ扱いするような子羊ちゃんには死んでも手ぇ出しませんから!」


彼が持つ携帯から、響先輩が何かしら怒鳴るように反論する声が洩れ聞こえてくる。
梶原はそれを、ニヤニヤしたまま軽く受け流した。


先輩後輩なのに、えらいフランクなやり取りだった。
現・会長が梶原ってくらいだし、生徒会内部の人間関係はきっと普段からこんな風に、ざっくばらんで楽しげなんだろうな。


――不意に、忘れていた1年生書記のことを思い出した。

背は目の前のチビ猿と同じくらい、160代の前半だったと思う。
ストレートの長い黒髪をシュシュで片側にまとめていた。

彼女と先輩も、こういうくだけた仲だったのだろうか。